2005年05月10日

制震構造に重ねて制震構造

 このゴールデンウィークの一日を使って、本当に久しぶりに住宅展示場に行ってきました。とはいえ、最新の住宅事情の取材とか、各社比較などと言うものではなく、旧知との交友と言うのがほとんどの目的になって言ったのに過ぎないのですが。その時にその住宅展示場を見ると、プランニングとしては生活空間に追加された接客のスペースに、最新の制震構造の装置が設置されていました。やはりついつい好奇心が立って、なるほどほほぅとじっくり分析させていただきました。
 制震については以前にも書いたことですが、今回、見学した建物は鉄骨造ですから、多少同じ制震パネルを用いていても考え方は変わってきます。正直言うと、ちょっと気持ちとしては複雑なものがあります。その詳細は後にして、いずれにしてもその制震パネルと言うのは、木質のものと同様になかなかのものと感じられました。

 前にも褒めたことですが、何よりも振動に対する変形を、同じように増幅させていると言うのが関心の的です。同じ例えで恐縮ですが、HONDAのASIMOが開発されたときに、倒れないように設計するのではなく、積極的に倒れこむことで歩けるようになったと言う話しと一緒です。地震などによる揺れと言うのは、単純には建物がしなったり、軋んだりして通常と比べて変形している状態です。それが建物だと思えば、なるべく変形しないように考えるのですが、わざと変形を増幅させる部分を作っているというのが、その例えに近いと思われるのです。

 ところが、よく見てみると、以前の木質のものと大きく違うことが発見されます。それは、縦から横への変形量の増幅の差が見られたからです。でも考えてみれば単純なことです。地震の外力に対する変形としては、層間変形と言う言葉が使われます。難しく思えますが、要は上層と下層の間にどれくらいの変形量が見られるかという話しです。通常まっすぐに立っているときに比べて、上層下層の床の位置が1cmもずれれば、それ相応の力が加わったと言うことですから。
 今回見学したものは、まさにこの上層と下層のズレのを、てこの原理を使って増幅させているのです。それもこうしたズレの捉え方は、鉄骨造であれば当然のことと思えます。
 

 と言うのは、特にラーメン構造(柱と梁だけの構造)では、柱間距離は遠くなります。高々天井高ぐらいの2.7mほどのものを作れば、この層間変形を拾いながら拡大できるのですから、水平方向の変形を増幅させれば良いと言うことです。ところが、木質のものは違いました。左右の柱のズレを、増幅させているのです。
 これは同じ1cm層間変形でも、例えば階高が2.7mと3.5mでは力の差にも、その耐力にも違いが出てきます。そこで、その変形量を高さで割って層間変形角というものを出しているのです。こうした変形角を前提とすれば、上下の層間変形も左右の層間変形と一緒に考えらるようになります。長方形を平行四辺形に変形してゆくことをイメージしてみたら、分かりやすいかもしれません。木質の住宅のように、いくつかの階高バリエーションを持っているとなると、こうした変形増幅装置のほうが良いのです。それぞれの工法に合わせて、変形のつかみ方が違うと言うことです。それよりも何よりも、くどいようですがそれを増幅させている発想が、何よりも面白いのです。
 しかし、それ以上に鉄骨造への制震は別の興味を湧かせます。

 と言うのは、そもそも鉄骨造そのものが本来は制震構造と捉えられるからです。特に新耐震基準以降は、上記のような建物の変形を計算に入れるのは普通になりました。ましてや、超高層ビルなどではいわゆるしならせることで、地震のエネルギーを吸収するように設計されています。この考え方そのものが、制震構造なのです。同様に、木造住宅も結局はその接合の部分で変形することが多く、地震の時には大きく揺れますので広い意味で制震構造といえます。仏閣にある塔建築も、その芯柱が揺れることで振動を吸収すると言う話しも結構有名な話です。これも、制震構造です。何も新しいことではなく、もっとも一般的な構造と言えるかも知れません。その代表格が、鉄骨造です。ですから、鉄骨造においては地震の際の変形から、建物はなんでもないのですが内装のクロスが破れるという被害が出たりします。破れることそのものも、エネルギー吸収ですから光速と音速の差ほどあるかもしれませんが、その瞬間はクロスも制震の役割を果たしているのです。

 その鉄骨造の制震性をより有効にするには、とにかく上手に揺れることが大切です。そのためには外見的には同じように見えている構造体でも、ブレースのバランスや、鉄骨の厚さを変えるなどして均等にゆれるように調整をしています。
 このように設計されている鉄骨造に、地震に効果を発揮する制震パネルを設置すると実はこのもともとの変形のバランスを崩しかねないのです。その為でしょうか、木質の場合とは違って何枚ものこの制震パネルを設置しなければならないのです。その分、当然コストも上がります。また、復元力の力を利用して、さらにエネルギー吸収をするという点でも、木質の方が効果が大きいでしょう。しかしそれでも、この効果によって恐らく揺れは半減させることができると思われます。この仕組みは、ミサワホームの「M−GEO」という制震システムです。

 こうしてこの制震システムを考えてみると、やはりポイントは振動を増幅させることであると思います。しかし、そのテクノロジーのカタログをながめて見ても、まともにそのことは書いてありません。書いてあるのは、免震との差別化でどのような場所でも対応できるという優位点程度です。こうなると顧客は、ややもすると制震パネルがなければ地震に弱いように感じてしまいます。 あくまでも耐震で耐えることができるからこそ、変形を増幅させて振動を効率よく消化しようとするものです。つまり、強い耐震があるからこそ増幅させる制震パネルが生きるのです。せっかくの宝物も、上手に表現する知恵がないと持ち腐れになります。もったいないですな。
 私ならこう書きます。


 逆転の発想で、地震の揺れを半減!
 増幅制震システム M−GEO

 ミサワホームの高い耐震性で実現しました。

tariru0127 at 08:41│Comments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!ぶっちゃけの、住宅余話 

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