2010年02月20日

アメリカの住宅を見てきた・・・26

 ロサンジェルスの空港に着いたら、早速、フランク・ロイド・ライトの設計した、バーンズドール邸に向かった。ライトの功績はさまざまなところで出会う。しかし、実際に建物を見るのは始めてである。50才になって始めてである。その意味では自分の不勉強さを思い知る。耳学問だけの自分が、現物のライトの造った建物と対面してどのような直感を受けるのか楽しみであった。
hollywood


 バーンズドール邸の第一印象は、日本的ではないと思った。それでいて微かにアジアの感覚があった。それは浅はかな知識がそうさせているのであろう。これまでにさまざまな写真で見ているアンコールワットの遺跡が連想されたからに過ぎないのだろう。また、日本的なものを期待していたのは、あまりにもライトと日本の関係についての著作に触れていたせいもある。唯一、日本画がリビングに掛けられていた。

burns_ent 日本的な印象を全く受けないのは、一番に木造ではないことからであろう。その象徴となるのが、玄関扉であった。分厚いコンクリート板で造っている。それが、まるで切り出したかのように形状をデザインされている。石の遺跡を想起させる。回廊式になっているところなどは、ちょっと間違うと日本を感じる場所ではあるが、おそらくアンコールワットを始め、巨石遺跡群や寺院的な建造物と思えば同じように感じるに違いない。
 しかし、アメリカの住宅を見に行ったのであって、別に日本の文化の片鱗を探しに行ったのではない。ライトらしさを学ぶことの方が大切である。その意味では、モールディングのデザインなどちょっと興味を誘うディテールは各所にあった。誠に残念ながら、室内の写真は許可されなかった。

 さて、目的としては住宅としての出来を学んでおかなければならない。
 ここで考えるのは、当時の建築としての住宅の性能はいかがであったのか。単純には性能をとやかく言う時代ではなかったかもしれない。それと温暖な地で今のような気密性を求めてもいなかったのだろう。




 先の玄関扉などは隙間だらけである。段差も多く、そのままでは住みやすいとは言い難い。ライトと言えば、仕事が途絶えたときに住宅の図面を書いて書店で売っていたという文を読んだことがある。それも400プランも作ったとあった。建築の中でも真に住宅のプロである。しかし、このバーンズドール邸を見る限りは、性能や機能については注力していないように思える。ましてやコストと工期に関しては度外視だったらしい。本来は敷地全体の計画であったが、4期までの工事となり、結果的にはクライアントと決裂した。そのため最後まで完成しなかったという。同時期に日本の帝国ホテルを手掛けていたと言うから、忙しかったのだろう。
 コスト監理もしていないのであれば、おそらく現代の住宅の世界ではプロとして見られないであろう。つまり、あくまでもデザイナーであると思わざるを得ない。しかし、考えてみると、それはそれで良いのかもしれない。住宅のプロというものを考え直す方が大切である。
 現代の住宅市場の中では、特に日本では省エネとか耐震とかそんなことばかりを言っている。この風潮が、そのまま上記のライトへのプロの評価となってしまう。つまり自分がその束縛の中にいると言うことである。
 逆に言うと、現代の住宅を建てるのに、本当は建築家に何を求めているのであろうか。住宅としての基本を求めているのか。そうであれば、求めている能力はそのまま建築士の試験の成績でよい。そんな能力はごまんとある。資格を持っている人は、5万どころか500万を越える。しかし実は住宅業界はそのように出来ていない。
 住宅の性能を作っているのは、実は作業に当たっている職人や部材の開発者であって、彼らは建築士を持っていないことも多いのだ。機能も同様である。どれだけ家事に通じた建築士がいるかと考えてみたら良い。こと住宅の機能に関しては、建築士の資格よりもむしろ、消費生活アドバイザーの資格の方が大切なのかもしれない。
 さらには、地震のことについても、熱性能のことについても、本当に私たちが分析し尽くしているわけではない。まだまだ、分からないことの方が多い。それはつまり、全く新しい技術が生まれる可能性があると言うことだ。アスベストが安くて性能が良くて扱いやすくて、その上安全な建材であると重宝に使われていたのに、今や毒扱いである。珪藻土も北米では発ガン性を懸念して禁止になっているとも聞いた。ここまでの範囲となると、真のプロの存在が危ぶまれる。少なくともライトの魅力は、こうした性能・機能にあったとは思えない。
 彼の魅力は、やはりデザイナーにあったのだ。でも、軽い意味でのデザイナーではない。住宅の価値を決めるのには、先の性能と機能のほかにデザインが大事である。その意味でのデザインに入れ込めることが、できたということであろう。
 では、住宅のデザインとは何か。次の回に考えてみたいと思う。

burns_location


tariru0127 at 10:29│Comments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!アメリカ住宅視察 

トラックバックURL

コメントする

名前
URL
 
  絵文字