2010年04月10日

アメリカの住宅を見てきた・・・28

 フランク・ロイド・ライトのバーンズドール邸の次に行ったのは、ギャンブル邸である。この家もおよそ100年前の家である。実は、このアメリカの住宅視察の中は、このギャンブル邸に出会うためにあったのではないかと思うくらいに気付かされることが多かった。それほど、心に残った建物である。

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 設計をしたのは、グリーン・グリーン兄弟と聞いた。建築は学んできたが、恥ずかしながら詳細は知らない。ただ、最初に前置きをいなければならないのは、このグリーン兄弟は日本に来ることはなかったと言う。ライトは何度も来日し、ライトの建物も日本に残っているが、グリーン兄弟は本当の日本を知らなかった。まずはこの前提を確認しておく。

 さて、その見学をしたギャンブル邸であるが、施主は世界的な家庭用品のメーカーであるP&Gの創始者である。社名に刻まれているGはまさに、ギャンブルのGである。さぞかし建築予算は潤沢であったに違いない。設計を手がけたグリーン兄弟に何を注文したのだろうか。それはこの残された建物から、推察するしかない。

 見た瞬間からの、私の結論は「日本」であった。現地の案内人の話を聞いていると、一部においてしか日本的な要素については説明をしていないし、アジア全体を意識した話であった。同道した者の多くが、同じように「日本」を感じていた。
 そもそも外観は木造であるが、いわゆるバンガローというか、ややもするとログハウスのような木材の圧倒感を持っている。それだけではもちろん日本的になど感じない。しかし、軒の出のバランスが何となく日本的に感じてしまう。さらにこれらの構造はいわゆる貫の造りとなっており、楔の使い方などが日本の建築を思い起こさせる。案内人によると、似たような構造様式は欧州を含めて色々な地域にあるようなことを言っていた。それは正しい解説であろう。
 しかしグリーン兄弟が、全く情報がなく、彼らの頭の中だけで想像してこれらのデザインが完成したとは思えない。ライトでも同じだが、何らかのモチーフやストーリーがあって、それに動かされるようにしてデザインが出来上がるはずである。その根元的なモチーフとして、すべてにおいて日本を感じるのだ。中国や韓国などに残されている東アジア系の社寺建築をとは違うものである。くしくも、建設当時の直前に万博もあってジャポネスクの風潮があったと言う。


 その最たるものが、ステンドグラスがはめ込まれた玄関の扉である。材質そのものは、日本とは全く関係ない。しかし、その図案は松の木であり、その構図はどのように見ても日本の浮世絵風である。Gamble_ent水墨と言うと、本来は中国に始まり、東洋的な芸術と感じられるが、末の曲がり具合といい構図的には日本であると確信した。何よりも見てもらうのが一番の解決であろう。

 ほかにも色々と感じさせるものがたくさんある。天井の組み方は、格子組である。日本では格式の高い一番座敷は格子天井である。さらに長押をデザインしたと思われるインテリアの造りがあった。暖炉の作り方はまさに、床の間を思わせる。茶室建築に良く見られる掛込天井にも、果敢に挑戦していた。ある意味では日本の建築デザインのちんどん屋状態であるとも言える。

 想像するに、グリーン兄弟には相当豊富な資料が与えられたに違いない。しかし、前提でも書いたように、彼らは日本には来ていない。でも、いかにも見てきたかのように様々なところで、日本の建築様式を模倣している。このことから勘案すると、どうやらこれに類する相当の写真があったのではないかと
思えるようになった。
 それらに写っていたものはたくさんあったに違いない。
 軒の出・貫・楔・梁継・虹梁・肘木・小屋組・格子天井・棹縁天井・掛込天井・床の間・違い棚・床柱・長押・屏風・障子・面取・面皮。
 当時の写真であるから、銀盤のモノクロ写真であろうが、多くの写真の中からこれらの要素を拾いだして、家のイメージへとつなげて言ったと思える。そして様々な部屋の中に散りばめていった。ある意味では、日本デザインのパビリオンであったのだ。

gamble_ext2残る問題は、このストーリーがどのように取り入れられたかということ。それはとても簡単なことであった。
 建てたギャンブル夫妻が、日本のデザインをコレクションしていたのである。主人は日本刀の鍔をコレクションしていた。その鍔のかたちに合わせて、テーブルや照明のデザインができているし、個室の壁の模様にはその鍔の図案がそのまま写されている。まっすぐに延びた梅の枝と一輪の花である。
 婦人は日本の焼き物を所有していた。実際に展示されてもいた。鍋島風の染め付けである。みるからに景徳鎮ではない。
 F.L.ライトのホリーホックではないが、ここまで見事に提示されていれば、もう疑う余地はない。まさに、日本のパビリオンとして建てられているのだ。


tariru0127 at 12:22│Comments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!アメリカ住宅視察 

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