2010年04月18日

アメリカの住宅を見てきた・・・30

 ギャンブル邸を見た後に、頭の中はアメリカ映画のことでいっぱいだった。アメリカ映画らしいアメリカ映画のストーリーパターンはまさに勧善懲悪の結論に向かって、苦境を重ねる時間が全体の80%である。その中にお決まりのロマンスがあり、愛が描かれる。そして最後には、必ず奇跡的な結末が正しい愛の姿を助けるようにして、悪が懲らしめられるのである。
 昨今のアメリカテレビドラマは、こうした単純さから脱却して複雑な人間関係が描かれている。と、思うが、結局は登場人物を増やすことで物語が増えているだけである。

pasadina03 このように言うと、いかにも深みのない映画が多いような口振りになるが、決してすべてがそうであるとは言えない。昔のアメリカ映画でも、奥深い作品は沢山あった。

 では、この映画そのものの価値とは何であろうか。しょせんは映画も小説と同じようにフィクションの世界であって、その意味では本物とは言えない。もちろんドキュメンタリーのような本物の映画もあるし、事実をドラマ化したノンフィクションもある。
 要は映画は見て楽しめるかである。ドキュメンタリーを見て楽しむ人もいれば、勧善懲悪にスカッとする人もいる。だからどちらも正しい。でも、互いに批判することがあるかも知れない。

 自分自身を振り返ると、どうやらドキュメンタリー派である。純粋なフィクションでも妙にリアリティを求めてしまうのである。そう言いながら、昔はミュージカルが好きだった。ミュージカルというのは台詞が歌になっているから、冷静になって見てみるとこれほど不自然な映画はない。でも、心から楽しんで見ることができた。

 結局、世の中の多数派を考えれば、単純にこのフィクションを楽しんでいるのである。リアリティさよりも、エンターテインメントでいいのである。逆に言うと、自分のような少数派は、人生を楽しめないのかも知れない。

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 アメリカの家を、偽物で張りぼての家と思ってしまう、日本の建築業界の感覚は同じようなところにある。本物にはこだわらないというのが、楽しむためのコツなのである。
 パサディナの街は、そんなことも忘れるような立派な街なのに、歩いていてもこのことで頭はいっぱいだった。



 それでもまだまだ迷いがある。
 やっぱり日本の感覚とアメリカの感覚は違う。やっぱり日本人はドキュメンタリーが好きなのだ。文学賞で直木賞よりも芥川賞により深みを感じさせるように。

 その象徴が、日本庭園であると思った。単純に言えば、自然を忠実に描写しようとしている。西洋の庭園のように、直線と幾何学的な配置で庭を造るのではなく、あたかもどこからか切り取られてきたような自然の風景を作ろうとしている。それでいて石の一つを置くのにも、そしてその石の脇に植えられている雑草にも作意を込めている。
 これらのことは自然を征服しようとしているのか、もしくは自然に調和しようとしているのかと、良く例えられて比較される。時には東洋の思想と西洋の思想との違いであるとも言われる。そしてこれらのことを日本語で習えば、当然、調和していることの方が優れているかのように感じてしまう。自分自身の感情としても、日本庭園の方が好きであるし、粋でかっこいいとも思う。

 しかし、映画と同じように、どちらの庭も結局はフィクションである。庭の風景は自然の姿ではなく、人間の手が加えられた作りものであることに違いはない。
 実は我々が自然と思っているものでも、同じように人の手が加えられているものはあまりにも多い。北山の杉並は植林があったからこそできた風景だ。本当に太古からの原生林というのはまさに希少である。なんといっても林野庁の調査では、日本の木材蓄積量では、天然林よりも人工林の方がまもなく倍に近づくほどに多いのだから。私の好きな画家の一人である東山魁偉先生の絵にも、山並みが描かれているが、その風景もいかにも植林の山である。でも、それを美しいと感じる。人間が、人間の頭の中で考えていることの呪縛から解かれないことの要にも思える。
 要は、本物か偽物かは気にしないことがいちばんなのである。

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 パサディナの街並みにある、アメリカの住宅はとても立派なものばかりであった。決して近づいて見ることはできないが、遠目で見ても本物の材であることは分かる。しかし、元が2×4で建てられていれば、まず間違いなく張りぼての作りである。そして、こうした立派な家のデザインの傾向を真似して作られた新しい家も、模造品ではなく高く評価されている。
 さらに評価が高まることは、個人の資産を増やすこととも直接的につながる。休日の度に住宅に手を施すのはそのためである。資産が増えることは楽しいことである。楽しめることは、何よりも正しく、本物であることの証である。
 典型的なアメリカ映画を楽しめなければ、住宅で資産を増やすことはできない。

 アメリカの住宅の市場は、こうして成り立っているのである。


tariru0127 at 11:11│Comments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!アメリカ住宅視察 

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